コロナによる日本経済への打撃
新型コロナウイルスの影響で、世界中の経済は大きな打撃を受けており、日本経済も例外ではありません。
2020年度のGDP(国内総生産)は前年度比 -4.6%、完全失業率は2.9%で前年度 から0.6ポイント悪化、有効求人倍率は1.10倍で前年度から0.76ポイント悪化と、日本経済の状態を表す様々な数字が悪化しました。
ワクチン接種が進んだアメリカでは、経済対策の効果が見え、金利を引き上げて調整を行う時期が注目される段階にあります。
アングル:米景気回復、6月に最終章突入も 再開本格化などでhttps://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-economy-idJPKCN2DJ1Z1
コロナウイルスの影響で世界経済が低迷する中、日本は今後どのように経済正常化を目指すのでしょうか。
既に一度実施された特別給付金について、日本政府は再給付の実施を否定しています。
特別定額給付金の再給付を菅総理・麻生財務相は否定、次の焦点は2月7日・15日https://news.yahoo.co.jp/byline/oohamazakitakuma/20210125-00219237/
更に、日本はすでにマイナス金利であるため、米国のように金利引き下げを行い、市場への現金の流入を促すこともできません。では、日本経済はこれからどのように上向いていくのでしょうか。
東京オリンピックが生む経済効果
東京オリンピックは、開催が決まってからは大きな経済効果が得られるとして、大きな期待が向けられていました。しかし、新型コロナウイルスの感染を抑え込めなかった東京では、遂に無観客での東京オリンピック開催が確実となったのです。
では、無観客での東京オリンピック開催は、どれだけの経済効果を生み、落ち込んだ日本経済回復の糧となるのでしょうか。
野村総合研究所の試算によると、東京オリンピックを開催するにあたり、観客を完全に受け入れる場合、無観客での実施では、それぞれ以下のような経済効果が見込めるとしています。
- 完全な観客の受け入れ / 1兆8108億円
- 無観客での開催 / 1兆6640億円 (1468億円減少)
無観客でのオリンピック開催となったことで、オリンピックにより見込まれる経済効果は1468億円減少したことになります。尚、海外からの観戦者の受け入れを断念した段階で、およそ1500億円の経済損失となるという試算となっているため、完全無観客でのオリンピック開催は、それと同等の経済的損失があったと言えます。
緊急事態宣言による経済損失
しかし、オリンピック開催によってもたらされると考えられている、1兆6640億円という経済効果は、日本経済回復の糧となるとは言えません。
それは、感染拡大によって発令される緊急事態宣言による経済損失が、オリンピックの経済効果よりもはるかに大きいからです。
野村総研の試算では、これまでの緊急事態宣言における経済損失の額は、以下のような推定となっています。
- 1回目 (2020/4/7~5/25) / 約6.4兆円
- 2回目 (2021/1/8~3/21) / 約6.3兆円
- 3回目 (2021/4/25~5/31) / 約3兆円
このように、東京オリンピックでもたらされる経済効果は、これまでの新型コロナウイルス拡大によって発生した経済損失よりも少ないことがわかります。また、東京オリンピックの開催によって、緊急事態宣言の長期化や、再宣言などが起きた場合、東京オリンピック開催によって経済損失が発生してしまう可能性も考えられます。
このことから、東京オリピック開催は、日本経済復活の糧にはならないと考えられます。そして、東京オリンピックの開催によって新型コロナウイルスの感染拡大が起きてしまった場合、経済的にマイナスになってしまう可能性もあるのです。いずれにせよ、東京オリンピック開催にあたり、万全の感染対策が求められるということは言うまでもありません。
日本政府によるコロナ後の経済対策
それでは、日本政府は新型コロナウイルスで落ち込んでしまった日本経済を回復させるために、どのような政策を打ち出しているのでしょうか。
内閣府は、「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」策として、45の政策を打ち出しています。45の政策全ては、内閣府のHPから確認することができます。(https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html)
今回は、その中で筆者が注目した、「雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制(経済産業省)」について紹介していきます。
この政策は、新卒・中途採用の拡大を行なった企業や、給与の増額を行った企業に対して、新規雇用者に支払う給与や、給与の増加額に対してかかる税額を、一部控除するものです。また、それぞれの要件には税額控除の上乗せ要件が定められており、社員の教育訓練費の増額を行なっていたり、経営力の向上がなされていることなどの条件を満たすと、控除額が上乗せされます。
これらの政策によって、企業が将来の成長を見据えて、新規雇用者を増やしたり、従業員の給与を増額したりすれば、より景気が上向く可能性はあると言えます。
しかし、現在日本政府から打ち出されている政策は、ある特定の人々や業種に対して行われるような対策は見られるものの、国民全体の消費活動を刺激するような効果が得られるとは考えにくいものです。国民の消費活動が活発化しなければ、企業の業績は上向かないため、雇用の拡大や、給与の増額は難しくなってしまうでしょう。
政府としては、この政策を活用して、雇用・給与の増加を企業に促していき、その結果として消費活動を活性化させるのが狙いと考えられます。これらの政策をどれだけ企業に活用させられるかが、今後の日本経済回復に向けての重要なポイントとなりそうです。